2016年7月25日(月)17:00~19:00
M&Dタワー2階 共用講義室2に於いて、公開シンポジウムを開催します。
昨年度開催し、たいへんご好評頂いたシリーズの第2弾です。
今回は3名の先生をお招きし、ご講演頂きます。
参加自由・事前登録不要ですので、皆様ふるってご参加ください!
公開シンポジウム『若手が開く、新しい再生医療の世界』
講演者:
遠山 周吾先生(慶應大学循環器内科 臓器再生医学寄附講座) 松村 寛行先生(東京医科歯科大学再生医学分野) 武部 貴則先生(シンシナティー小児病院、横浜市立大医学部)
抄録: 遠山 周吾先生 「ヒト多能性幹細胞におけるユニークな代謝機構と心臓再生医療への応用」 ヒトES/iPS 細胞は再生医療における魅力的な細胞源であるが、分化させた細胞集団の中に 腫瘍形成の原因となる未分化幹細胞が残存することがわかっている。仮にこうした未分化幹細胞 が移植されると、腫瘍を形成する危険性があるため、目的とする細胞を純化精製すると同時に、 未分化幹細胞を除去する方法の開発が望まれてきた。我々は、未分化幹細胞と心筋細胞における ユニークな代謝機構を解明し、腫瘍形成の原因となる未分化幹細胞を除去し心筋細胞のみを安価 かつ簡便に純化精製する方法を確立してきた (Tohyama S, Cell Stem Cell 2013, Cell Metabolism 2016)。本シンポジウムでは多能性幹細胞における代謝機構およびその特性を 利用した心臓再生医療の今後の展望について紹介したい。 松村 寛行先生 「毛包の老化メカニズム」 加齢に伴う老人性脱毛症のメカニズムは、ほとんど明らかにされていない。今回、加齢に伴い 哺乳類の毛包が、徐々にミニチュア化し、脱毛に至ることを初めて報告する。毛包幹細胞の運命解析 から、加齢に伴いDNA損傷を受けた毛包幹細胞は、その維持に必須な17型コラーゲンの分解を引き 起こし、表皮角化細胞への異常分化を引き起こし、表皮に移動しながら皮膚から除去されることが 分かった。この現象は、毛包幹細胞特異的17型コラーゲン欠損マウスにおいて、若齢より観察され、 基底細胞特異的17型コラーゲン過剰発現マウスにおいては、逆に、それら一連の加齢変化が回避 されることが分かった。これらの結果は、DNA損傷により分解を受ける17型コラーゲンが、毛包幹 細胞を軸とした“毛包の老化メカニズム”の中心的な役割を果たしていることを明らかにしている。 武部 貴則先生 「多細胞系からなる複雑なヒト臓器の人為的構成」 近年、iPS細胞をもちいた立体的な臓器創出を目指す試みが急速に進展しています。本講演では、 われわれが進めてきた複雑組織創出を目指すコア技術(器官原基法)、および、その治療応用へ向けた 最先端の開発状況について分かりやすく解説します(Nature, 2013; J Clin Invest, 2014; Cell Stem Cell, 2015 )。さらに、シングルセル解析などを始めとした最先端技術との融合によるヒト発生 生物学研究における応用事例など (in revision) 、臓器再生医療研究が拓くさまざまな波及効果も 含め将来展望を議論します。